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■咽頭がんとは

1.上咽頭がん
上咽頭は解剖学的に鼻腔のつきあたりで、口を開けた時に見える口蓋垂、および扁桃腺(正しくは口蓋扁桃)の上後方の部位をさし、頭蓋底の骨を境として脳と接しています。この部位に発生するもので耳慣れたものはアデノイド(腺様増殖症)です。アデノイドは咽頭扁桃という組織が増殖するものですが、腫瘍性のものではありません。上咽頭がんはその周辺に発生する悪性腫瘍です。上咽頭の側壁には、耳管開口部と呼ばれる中耳と連絡する管の出口があります。このため、上咽頭がんでは鼻症状のみでなく、耳に関連した症状も出現します。

上咽頭がんは台湾、中国南部、東南アジアなどの地域に多く発生し、わが国ではまれな疾患です。現在、わが国における1年間の上咽頭がん発生数は、約500例と推定されます。男女比は3:1で男性に多く、年齢的には40〜70歳代に多発していますが、10〜30歳代にもみられます。組織学的には、ほとんどの場合が低分化型扁平上皮がんで、悪性リンパ腫がこれに次いでいます。頭頸部がんで、通常みられる高分化型扁平上皮がんは少なく、腺組織由来のがんはさらに少なくなっています。

上咽頭がんの発症には、エプスティン-バーウイルスというウイルスが関与しているのではないかとの学説もありますが、現在のところ確定的なことはわかっていません。


2.中咽頭がん
一般に「中咽頭(ちゅういんとう)」という言葉になじみがないと思いますので、その中咽頭の位置および役割から述べます。

1)中咽頭の位置と分類
咽頭は鼻や口の奥にあり食道や喉頭(こうとう)の上に位置します。その咽頭はさらに上・中・下に細かく分類されます。上咽頭(じょういんとう)は鼻の突きあたりにありますが、直接見ることはできません。中咽頭は口を大きく開けた時、口の奥に見える場所です。下咽頭(かいんとう)はさらに下のほうにあり、食道や喉頭の入口付近に位置しますが、直接見ることはできません。中咽頭はさらに4つの部位に区分されます。まず、口を大きく開けた時に見られるいわゆる「のどちんこ」と呼ばれる突起した部分と、その上のうわあごの軟らかい部分を「軟口蓋(なんこうがい)」といいます。ただし、うわあごの固い部分は「硬口蓋(こうこうがい)」といって中咽頭ではなく口腔の領域に含まれます。「扁桃(腺)」も口の奥の左右にあり中咽頭の一部で、口の奥の突きあたりの壁は中咽頭の「後壁(こうへき)」と呼ばれています。もうひとつ、舌のつけ根も「舌根(ぜっこん)」といって中咽頭に属します。ただし、口の中に見える舌の前方の大部分は、なめらかによく動くため「舌可動部(ぜつかどうぶ)」あるいは「口部舌(こうぶぜつ)」と呼ばれ、口腔に属します。

2)中咽頭の役割
中咽頭は、食物や空気の通路ですが、食物を飲み込む嚥下(えんげ)や言葉を話す構音(こうおん)をうまく行うための重要な働きをしています。

がんができた場合や、外科療法を行った後に生じる症状を理解するために、中咽頭のそれぞれの部位の役割をもう少し詳しく説明します。

軟口蓋は、鼻と口との間を開けたり閉じたりする扉の役割をもっています。この軟口蓋がなくなると、食べたものが鼻に流れ込んだり、話をする時に息が鼻に抜けて言葉がわかりづらくなります。これを開鼻声(かいびせい)といいます。

扁桃は、幼児期には外界から進入する細菌などに対する免疫防御器官としての大切な役割をもっていますが、成人では食物、空気の通路としての役割しか果たしていません。ただし、リンパ組織に富んでおり悪性リンパ腫の好発部位となります。

後壁は咽頭と頸椎の間をさえぎる壁ですが、食物や空気の通路としての役割しかありません。

舌根は重要な役割をもっています。食べた物を飲み込む時にこの舌根が奥に動いて食物を食道に送り込みます。同時に誤嚥(ごえん:食物が喉頭から気管に入ってむせること)がないよう、この舌根が喉頭の上を塞ぎます。この働きがうまくいかないと、誤嚥のため口から食事ができなくなります。

3)頻度と発症原因
頭頸部(主として耳鼻咽喉科が診療する領域)自体、がんの発生頻度は少なくがん全体の約5%といわれています。この領域にできたがんを頭頸部がんといいます。中咽頭がんはその中に含まれますが、その頻度はさらに少なく、頭頸部がんの約10%にすぎません。中咽頭には、扁平上皮がんの他に悪性リンパ腫、粘膜下に存在する附属腺から発生する腺がんなどがみられますが、最も多い扁平上皮がんについて話を進めます。わが国では、年間1,000〜2,000人程度に発症する比較的まれながんといえます。ただし、地域的には九州、沖縄など南の地域に多く発症する傾向にあり、強い酒などが原因ではないかといわれています。また、世界的にはインド、東南アジア、フランス、イタリア、ロシアなどに多く発生する傾向にあり、やはり強い酒や、インドのかみたばこをたしなむ風習などが、中咽頭がん発症の誘因のひとつではないかと考えられています。男女比では他の頭頸部がんと同様に圧倒的に男性に多く、好発年齢は50〜60歳代で、比較的若い人にもみられます。

このように中咽頭がんの発症状況から、酒とたばこが大きな要因と考えられています。さらに頭頸部の他の領域、すなわち口腔、下咽頭、喉頭などに発生するがんも同様で、長期の飲酒歴や喫煙歴のある人は頭頸部がんに注意する必要があります。


3.下咽頭がんとは
人間の「のど」は、咽頭と喉頭の2つの部位からできています。そして咽頭は鼻に近いほうから上咽頭、中咽頭、下咽頭と下がっていき食道に続いていくので、下咽頭はのどの一番底の部分ということになります。また、喉頭は下咽頭の前面に位置しています。「のどぼとけ」にあたるところが喉頭で、その後ろが下咽頭ということになります。のどのおおまかな役割は、空気の通り道と食べ物の通り道の2つですが、中咽頭はひとつの道で2つの機能を果たし、喉頭と下咽頭のところでそれぞれ専門の2つの道に分かれます(空気:喉頭→気管→肺、食物:下咽頭→食道→胃)。この下咽頭にがんが発生した時、下咽頭がんといいます。

下咽頭がんの原因はまだよくわかっていませんが、喫煙や飲酒との因果関係が深いといわれています。ヘビースモーカーで大酒飲みの方ほど下咽頭がんにかかりやすく、下咽頭がんの「高危険群」といわれています。男性は女性の4〜5倍の頻度で発生し、年齢は50〜60歳代に多く、全体の60%以上はこの年代に発症します。ただ、下咽頭がんの発症に関してひとつ例外的なことは、下咽頭の輪状後部という部位にできるがんは、喫煙や飲酒に関係なく貧血(特に鉄欠乏性貧血)をもつ女性に多く発症するということです。

頭頚部がんの一種。

◆咽頭がんの部位・分類

1、上咽頭癌
2、中咽頭癌
3、下咽頭癌

◆上咽頭がんの症状

1、上咽頭がん
・無症状
・首リンパ節の腫脹
・鼻づまり
・鼻血
・難聴
・耳閉感(耳が詰まった感じ)
・視覚障害(脳神経の圧迫による)
・疼痛

※上咽頭がんは肺や骨・肝臓への遠隔転移が多い
・肺転移・・血痰、咳
・骨転移・・強い痛み
・肝転移・・腹部・背中の腫れ、痛み、疲労感


2、中咽頭がん
・喉の違和感、異物感、軽い痛み
・片方の扁桃腺が腫れる
・リンパにしこり
・耐え難い痛み
・出血
・開口障害(口が開けにくくなる)
・嚥下障害(飲み込みにくくなる)
・呼吸困難

3、下咽頭がん
・無症状
・喉の違和感、異物感、軽い痛み
・耳の奥の痛み
・声のかすれ
・呼吸困難
・首のリンパ節の腫れ

※中咽頭がんは首のリンパに転移しやすい。
転移先は頚部リンパ節

※食道への転移ではないがんが見つ
かることが多い


◆咽頭がんの診断

1、内視鏡検査
2、触診
3、生検(1,2でがんが疑われる場合)
4、画像検査
 A)X線検査
 B)レントゲン検査
 C)CT検査
 D)MRI検査


◆咽頭がんの治療(分類別)
1、上咽頭がん

-上咽頭がんの病期-

1期 がんが上咽頭に留まっている状態
2期 がんが中咽頭や鼻腔などの隣接する部位に浸潤しているが、リンパ節転移は無い。咽頭側方へ浸潤があるか鎖骨上のリンパ節以外の片側リンパ節に転移がある。がんが上咽頭に留まっていてもがんと同じ側に6cm以下の頚部リンパ節転移がある、あるいは咽頭側方から頭蓋底付近へのがんの浸潤がある状態
3期 がんが骨組織や副鼻腔に拡がっているか、頚部リンパ節両側に6cm以下のリンパ節転移がある状態
4期 がんの浸潤がすすみ頭の中(頭蓋内)、脳神経、眼窩、下咽頭などへ拡がる、頸部リンパ節転移が6cmを超えるか、転移が鎖骨上までおよぶ、遠隔転移を認めるといった状態

A:外科療法

最初に手術が行われることはほとんどない。放射線療法を行っても消失しないリンパ節転移に対してはリンパ節を切除するリンパ節郭清が行われることがある。

B:放射線療法

放射線感受性(放射線が効く確立)が高いため手術療法よりも放射線療法が優先される。

C:化学療法

抗がん剤単独での治療では効果がないため放射線療法と同時に行われることが多い。放射線療法や外科療法の補助的な治療として位置づけ。


使用される抗がん剤

・5FU+シスプラチン(他にランダ、ブリプラチン)
・カルボプラチン=パラプラチン・タキソール         
・タキソテール        ・スプラチン(+ブレオマイシン、メソトレキセート)


2cm以下の大きさをT1、2cmを越え4cm以下の大きさの場合をT2、4cmを越えた場合をT3、さらに周囲の筋、骨、喉頭などへ進展した場合をT4と分類し、リンパ節転移の有無と併せて病期判断


2、中咽頭がん

-中咽頭がんの病期-

1期 がんがT1の大きさで頸部リンパ節転移がない状態
2期 がんがT2の大きさで頸部リンパ節転移がない状態
3期 がんがT1またはT2の大きさで、同側の頸部に3cm以下のリンパ節転移が1個のみ認められる状態。あるいはがんがT3の大きさで頸部リンパ節転移がないかあるいは同側の頸部に3cm以下のリンパ節転移が1個のみ認められる状態
4期 がんがT4になった場合。頸部リンパ節転移が2個以上認められる、あるいは3cmを超える大きさになる、あるいは反対側の頸部に出現した場合。
遠隔転移(腫瘍が頸部以外の離れた場所に転移すること)が認められた場合はIV期

A:外科療法

最初に手術が行われることはほとんどなく、第一選択は放射線療法。
がんが進行している場合や、放射線が効きにくい場合、再発しやすい場合などに手術療法が行われる。

B:放射線療法

放射線感受性(放射線が効く確立)が高いため手術療法よりも放射線療法が優先される。

C:化学療法

抗がん剤単独での治療では効果がないため放射線療法と同時に行われることが多い。
放射線療法や外科療法の補助的な治療として位置づけ


使用される抗がん剤

・5FU+シスプラチン(他にランダ、ブリプラチン)
・カルボプラチン=パラプラチン
・タキソール
・タキソテール
・スプラチン(+ブレオマイシン、メソトレキセート)


3、下咽頭がん

-下咽頭がんの病期-

1期 がんが下咽頭のひとつの部位にとどまるかT1の大きさであり、頸部のリンパ節には転移がない状態
2期 がんが下咽頭のひとつの部位にとどまらず隣の部位にまで拡がっているが、喉頭の中には入り込んでいないか、がんの大きさがT2であり、頸部のリンパ節にも転移がない状態
3期 がんが下咽頭のひとつの部位にとどまらず隣の部位に拡がっており、かつ喉頭の中に入り込んでいて、声帯(声をだすところ)が動かない状態か、がんの大きさがT3で、がんと同じ側の頸部リンパ節に3cm以下の転移が1個ある状態
4期 がんがT4になった場合。頸部リンパ節への転移が6cm以上になったり2個以上あったり、がんと逆側の首に出てきた状態か、他の臓器(肺、骨など)に転移している状態

A:外科療法

第一選択。

B:放射線療法

あまり選択されない。

C:化学療法

抗がん剤単独での治療では効果がないため放射線療法と同時に行われることが多い。
放射線療法や外科療法の補助的な治療として位置づけ。


使用される抗がん剤

・5FU+シスプラチン(他にランダ、ブリプラチン)
・カルボプラチン=パラプラチン
・タキソール
・タキソテール
・スプラチン(+ブレオマイシン、メソトレキセート)


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