脳腫瘍(成人)

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【1】脳腫瘍とは

脳腫瘍とは頭の骨(頭蓋骨)の内側に生じるできもの(腫瘍)のことです。
脳組織自体から発生する原発性脳腫瘍と、他の臓器の癌が脳へ転移してきた転移性脳腫瘍とに分けられます。

1.原発性脳腫瘍

脳そのものから発生する腫瘍(脳実質内腫瘍)と、脳を包む膜や脳神経、下垂体などから発生し脳を圧迫するように発育する腫瘍(脳実質外腫瘍)とにさらに大きく分けられています。
原発性脳腫瘍には、良性と悪性の2種類あります。たとえ良性の腫瘍であっても、頭蓋内という限られたスペース内に発生する脳腫瘍は、大きくなると正常な脳を圧迫し障害をおこし、治療の対象になります。
原発性脳腫瘍の種類
(1)神経膠腫(しんけいこうしゅ)
-1星細胞腫(せいさいぼうしゅ)
-2悪性星細胞腫
-3膠芽腫(こうがしゅ)
-4髄芽腫(ずいがしゅ)
(2)髄膜腫
(3)下垂体腺腫
(4)神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)
(5)先天性腫瘍(頭蓋咽頭腫など)
原発性脳腫瘍の中で最も多いのが、神経膠細胞から発生する神経膠腫と呼ばれるもので、全体の約1/4を占めます。神経膠細胞とは、神経細胞と神経細胞の間や、神経細胞と血管との間にあり、栄養や酸素を神経細胞に供給する役割をもっています。
神経膠腫のうち、最も発生頻度の高いものは星細胞腫です。成人では大脳半球に多く、小児では小脳に発生しやすいものです。小児の星細胞腫の中には、手術で治癒するものがあります。
成人発生の星細胞腫には、比較的良性の星細胞腫と悪性の悪性星細胞腫とがあります。星細胞腫は比較的良性の腫瘍ですが、悪性化をおこすことがあるため注意を要する腫瘍です。膠芽腫は、神経膠腫全体の約1/3を占め、神経膠腫の中でも最も悪性度が高く、45~65歳の男性に好発する非常に治療が難しい腫瘍です。
神経膠腫に次いで多いのが、脳を包んでいる髄膜に発生する髄膜腫です。その他、ホルモンの中枢である下垂体に発生する下垂体腺腫、聴神経に発生する神経鞘腫などがあります。

2.転移性脳腫瘍

原発性脳腫瘍が、頭蓋内の病巣から肺や肝臓など他臓器に転移することはほとんどありませんが、他の臓器で生じた癌が脳に転移することは少なくありません。これを転移性脳腫瘍といいます。
特に脳への転移が多くみられるのは、肺がん、乳がんなどです。また、肺がんの転移は脳実質と呼ばれる脳の内部に、乳がんの転移の場合は硬膜などの膜組織に定着しやすい性質をもっています。
また、転移性脳腫瘍の特徴として、転移が複数個所認められることがあげられます。さらに、脳脊髄液という脳を取り囲んでいる液体の中で、癌細胞が増殖することもあります。この場合は極めて治療が難しくなります。

【2】症状

脳腫瘍がおこす症状には、腫瘍自体が神経を圧迫したり壊したりする局所症状と、限られた頭蓋内スペースの中で腫瘍が大きくなることによりおこる頭蓋内圧亢進症状(ずがいないあつこうしんしょうじょう)があります。

1.局所症状
脳腫瘍が発生した部位

脳腫瘍が発生した部位により症状が異なります。
脳は神経の中枢ですが、運動や感覚などのいろいろな機能は脳の中で分散して行われています。例えば、左の前頭葉の運動野という手足などを動かす部位に腫瘍ができると右半身の麻痺がおこります(右側に腫瘍ができた時は、麻痺は左半身におこります)。
脳の前方にある前頭葉の左側に腫瘍ができた右利きの人の場合には、無気力、痴呆様行動などの性格変化や尿失禁、右半身の麻痺、言語障害などが出現し、後頭葉に腫瘍ができた時は、視野狭窄(しやきょうさく)、視野欠損などがみられます。
また、右利きの人の左前頭葉(左利きの多くの人では右前頭葉)に腫瘍ができると言語障害がおこります。
脳の中心にある下垂体や松果体(しょうかたい)、視床下部付近に腫瘍ができると眼を動かす動眼神経の障害で複視(物が二重に見える)などの異常をおこしたり、ホルモンの分泌異常のために無月経や成長障害などの内分泌障害などがおこることがあります。
小脳や脳幹と呼ばれる部位に腫瘍ができた場合には、手足などがふらつき、調整が効かない失調になったり、聴力障害、顔面麻痺、めまいなどがおこってきます。

【3】画像診断
1.CT(コンピュータ断層撮影)、MRI(核磁気共鳴像)

現在の画像診断の中心をなす撮影法です。腫瘍の位置や大きさ、画像上の特徴がわかり、重要な検査です。現在では5mmほどの大きさの腫瘍までわかるようになっています。大きさの変化や形状の時間的変化、周囲の脳との位置関係などを見る上で重要です。

2.脳血管造影

脳の血管を造影することにより、腫瘍への栄養血管や腫瘍自体の血管の性状などの詳細な情報を取得でき、診断や手術検討に用いる重要な検査です。

【4】病期診断

成人脳腫瘍が画像診断で見つかった場合には、次に治療方法を決定するために脳腫瘍がどのような種類で悪性なのか良性なのか、悪性の場合にはどの程度悪性なのかを決める必要があります。
このためには、開頭手術を行って腫瘍をできるだけとってその組織を顕微鏡で調べ、脳腫瘍の種類と悪性の場合には悪性度を診断する病理診断が行われます。また、画像診断所見によっては、手術で腫瘍の一部を採取して同様に病理診断を行う方法があります。どちらを選ぶかの基準の多くは、画像診断と全身状態によります。

【5】治療法の種類

脳腫瘍の治療には、外科療法、放射線照射療法、抗癌剤による化学療法があります。

1.外科療法

外科療法により患部を全部摘出することが最も有効な治療法です。多くの良性の腫瘍はこれで治癒します。しかし、脳腫瘍は良性でも全部切除できないこともあります。
手や足を動かす神経のあるところに脳腫瘍ができた場合、正常の脳を傷つけると手や足が動かなくなるので、すべての腫瘍を摘出できないこともあります。
手術には機能を損なうことなくどこまで摘出できるかといった難しい判断が必要ですが、最近の最先端のコンピュータ技術を用いたより侵襲(しんしゅう)の低い手術手技と医療機器の進歩は目覚ましいものがあり、治療成績も向上しています。

2.放射線療法

悪性脳腫瘍の全部、あるいは比較的良性の腫瘍の一部に対して、放射線療法は重要な治療法のひとつです。外科療法や化学療法と併用したり、単独でも行います。この場合、できるだけ病巣部だけに照射し正常脳神経には照射しないようにします。
良性腫瘍でも、小さな神経鞘腫、髄膜腫には、現在ガンマナイフ治療という方法も用いることがありますが、これも放射線治療の応用です。このガンマナイフは悪性脳腫瘍に対して有効とされています。線源は違いますが、SMARTという集光照射の方法もあります。

3.化学療法

抗癌剤による化学療法は、悪性脳腫瘍の治療法として外科療法や放射線療法と併用されて行われています。経口投与、静脈注射、局所投与などの方法があります。いろいろな薬剤の組み合わせや投与の方法が、臨床研究により開発されています。他の癌に対する全身化学療法と違い、脳には脳血管関門が存在し、抗癌剤が効きにくいことがあります。

4.その他の療法

遺伝子治療は、現在米国で臨床研究が行われていますが、悪性脳腫瘍への応用はその中でも注目されているもののひとつです。また、人間がもともともつ免疫力を利用した免疫療法も臨床試験が行われ、有効性についての検討が行われています。

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