胃がん(進行胃がん・スキルス性胃がん)

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胃がん(進行胃がん・スキルス性胃がん)

【1】胃がんとは
胃がん(進行胃がん・スキルス性胃がん)

人間が食物を食べると、のどから食道を通って胃に入ります。食道は単なる食物の通り道にすぎませんが、胃は胃袋ともいわれ、食物をしばらくの間とどめ、コンクリートミキサー車のように胃液と撹拌(かくはん)し、適量ずつ十二指腸へ送り出します。
胃は、食道からの入口部分である噴門部(ふんもんぶ)、胃の中心部分である体部、十二指腸側への出口部分の幽門部(ゆうもんぶ)に大きく分けられます。胃の入口付近の胃体部と呼ばれる部分は胃酸や内因子を分泌し、胃の出口に近い部分は食物を送り出すポンプの役割をしています。
出口に近い幽門前庭部は胃液の分泌を調節するガストリンというホルモンを出しています。また、胃の壁は5つの層に分かれており、最内層が胃液や粘液を分泌する粘膜、中心が胃の動きを担当する筋肉、最外層は臓器全体を包む薄い膜で漿膜(しょうまく)と呼ばれています。
胃がんは、胃の壁の最も内側にある粘膜内の細胞が、何らかの原因で癌細胞になって無秩序に増殖を繰り返す癌です。胃がん検診などで見つけられる大きさになるまでには、何年もかかるといわれています。大きくなるに従って癌細胞は胃の壁の中に入り込み、外側にある漿膜やさらにその外側まで広がり、近くにある大腸や膵臓にも広がっていきます。癌がこのように広がることを浸潤といいます。

胃がんの発生と進行

胃がんは、粘膜内の分泌細胞や、分泌物を胃の中に導く導管の細胞から発生します。はじめは30~60ミクロンの大きさから出発し、年単位の時間がかかって 5mm程度の大きさになるころから発見可能になります。粘膜内を横に広がっているうちはよいのですが、胃壁の外に向かって粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜へと徐々に深く浸潤しはじめると、それに伴って転移しやすくなり、予後が悪くなってきます。
この癌の外方向への進展は深達度(しんたつど)と呼ばれています。胃がんの種類によって、胃の内腔へも突出するような成長を示すものと、主に水平方向に浸潤していくものがあります。後者の場合、まだ早期胃がんの時期に、その部分に潰瘍を合併することがしばしばあります。これは癌の部分が胃液でただれやすいためと考えられており、消化性潰瘍とまったく同様の症状を起こすため、早期発見の大事な徴候となります。

【2】胃がんの症状

胃がんの初期には、自覚症状は、ほとんどありません。胃がんが進行していくと、腹痛、胸やけ、吐き気、嘔吐、もたれ、食欲不振などがあらわれます。症状は、胃腸の病気のよくある症状と特に変わりありません。胃がんは、さらに進行すると、腫瘍からの出血に伴う症状が出現します。便が黒色となったり、軟便傾向となります。さらに胃がんからの出血がつづき、貧血が進行すると、貧血による自覚症状、たとえば運動時の息切れ、易疲労感などの症状が現れます。さらに進行すると腫瘍の増大に伴い腹部にしこりを触れたり、食物の通過障害、閉塞症状が現れることがあります。さらに、血液やリンパ液で運ばれて、他の臓器に移転すれば、低タンパク血症や脱水症状があらわれ、臓器に障害がおこります。

【3】胃がんの検査

胃がんが疑われると、胃の内視鏡検査や胃X線検査を行います。胃がんの広がりを調べる検査としては、胸部X線、腹部超音波、CT、注腸検査などがあります。

1.内視鏡検査

内視鏡(ビデオスコープ)で胃の内部を直接見て、胃がんが疑われる場所の広がりや深さを調べる検査です。以前は胃カメラと呼ばれていました。胃がんが疑われる場所の組織の一部を採って、癌細胞の有無を調べる病理検査もします。胃がんの深さを詳しく調べるために超音波内視鏡が実施される場合があります。

超音波内視鏡について
超音波内視鏡は、内視鏡の先端についた超音波装置を用いて胃病変の粘膜下の状態、また胃壁そのものや胃壁の外の構造などを観察することができます。つまり、胃がんがどのくらい深く進展しているか、胃の外側にあるリンパ節が腫れていないか(リンパ節転移の有無)などについての詳細な情報を得ることができます。超音波内視鏡は定期的に行われるものではなく、通常の内視鏡検査では不十分な場合にのみ追加で行われます。

2.病理検査
内視鏡検査で採取した組織に、癌細胞があるのか、あるとすればどのような種類の癌細胞かなどについて顕微鏡を使って調べることを病理検査といいます。

3.胃X線検査(バリウム検査)
バリウムを飲んで、X線で胃の形や粘膜(しわ)の状態を見ます。途中で発泡剤を飲んで胃を膨らませます。

4.CT検査
X線を使って体の内部を描き出し、治療前に転移や周辺の臓器への胃がんの広がりを調べます。治療後は経過によって行います。
胃がんでは、肝臓への転移、リンパ節への転移、癌(腫瘍)そのものの周辺臓器への浸潤などを調べます。胃がんの治療法決定に、どのような転移がどの程度あるかが重要な判断の根拠となります。ことに進行胃がんの術前検査として必要です。

5.注腸検査
お尻からバリウムと空気を注入し、大腸の形をX線写真で確認する検査です。胃のすぐ近くを通っている大腸に癌が広がっていないか、腹膜転移が生じていないかなどを調べます。検査中に、大腸の中に空気が入ると、下腹部の張り感を強く感じることがあります。また、大腸全体をうまく造影するには、体の向きを頻回に大きく変えながら撮影する必要があり、かたい台の上で転がされるようになりますから、少々苦痛を感じることもあります。

【4】胃がんの病期(ステ-ジ)

1~4の病期に分けますが、ローマ数字が使われています。I期(IA、IB)、II期、III期(IIIA、IIIB)、IV期に分類されています。病期は、胃がんが胃の壁の中にどのくらい深くもぐっているのか(深達度)、リンパ節や他の臓器への転移があるかどうかによって決まります。病期によって治療方法が決まっています。
癌の深さが粘膜下層までのものを「早期胃がん」、深さが粘膜下層を越えて固有筋層より深くに及ぶものを「進行胃がん」といいます。癌が胃の壁の内側から外側に向かって深く進むに従い、転移することが多くなります。病期は治療前の検査によって決まりますが、手術のときに転移などが見つかれば、変更されることもあります。

 IA期  胃の粘膜に限局しているか、粘膜下層まで浸潤があるがリンパ節転移がない状態
 IB期  胃の粘膜に限局しているか、粘膜下層まで浸潤していて、胃に接したリンパ節への転移も認められる状態。または、胃の筋層まで浸潤しているが、リンパ節転移がない状態
 II期  胃の筋層まで浸潤していて、胃に接したリンパ節への転移も認められる状態。または、癌は胃の筋層を超えて漿膜まで達しているがリンパ節転移がない状態。
 IIIA期  胃の筋層まで浸潤していて、第2群とよばれる胃に必要な血液を送る血管に沿ったリンパ節に転移が認められる状態。または、癌は胃の筋層を超えて漿膜まで達しており、胃に接したリンパ節への転移も認められる状態。または、癌は胃の漿膜を超えて多臓器に浸潤しているが、リンパ節転移がない状態。
 IIIB期  胃の筋層を超えて漿膜まで達しており、第2群リンパ節に転移が認められる状態。または、癌は胃の漿膜を超えて多臓器に浸潤していて胃に接したリンパ節への転移も認められる状態。
 IV期  胃を3重に取り巻くリンパ節のうちもっとも外側に位置するリンパ節まで癌が転移した状態。または、癌は胃の漿膜を超えて多臓器に浸潤していて第2群リンパ節に転移が認められる状態。または、肝臓や肺、腹膜などに遠隔転移がある状態。

【5】胃がんの治療

1.手術療法(外科療法)

胃がんでは、手術治療が最も有効で標準的な治療です。胃の切除と同時に、決まった範囲の周辺のリンパ節を取り除きます(リンパ節郭清(かくせい))。胃の切除の範囲は、胃がんのある場所や、病期の両方から決定します。また、胃の切除範囲などに応じて、食物の通り道をつくり直します。リンパ節に転移している可能性がほとんどない場合には、手術ではなく、内視鏡による切除が行われることもあります。

(1)胃の切除方法、切除範囲について

胃切除の範囲は胃がんの部位、進みぐあいの両方から決定されます。リンパ節郭清がいらない癌、つまりリンパ節に転移している可能性がほとんどない胃がんでは、手術ではなく、内視鏡による切除が行われます。リンパ節転移の可能性がある癌では手術が行われますが、癌が噴門に近い場合は胃全摘、癌が噴門と離れていれば幽門側胃切除が行われます。後者の場合、胃の2/3から4/5程度が切除されますが、胃の入口である噴門は温存され、ある程度の胃体部が残ります。癌が噴門に近くても、比較的小さな早期胃がんであれば、噴門側胃切除が行われることもあります。
(2)リンパ節郭清

癌が深くなるほど、リンパ節に転移している頻度が増し、より遠くのリンパ節まで転移している場合が増えます。早期胃がんでは、リンパ節転移はないか、あっても1群リンパ節にとどまることが多いのですが、進行胃がん、それも漿膜まで侵されているような胃がんでは、2群、3群のリンパ節まで転移することが多くなります。2群リンパ節は転移頻度も高く、切除効果も高いので、そこまで含めて切除する方法がD2手術と呼ばれ、現在の一般的な手術となっています。3群リンパ節まで郭清する効果は、最近の臨床試験で否定的な結果が出ましたので、今後は行われなくなるでしょう。

(3)消化管の再建について

幽門側胃切除後は残った胃袋(残胃:ざんい)と十二指腸を直接つなぎ合わせる方法(ビルロートI法)か、十二指腸断端を閉鎖し、残胃と空腸を吻合する方法(ビルロートII法、ルーワイ法)で再建されます。再建の単純さと、食物の流れが生理的ということで、ビルロートI法が多く用いられてきましたが、この方法は縫合不全(ほうごうふぜん:縫い合わせたところのくっつきが悪く漏れること)があることや、胆汁の残胃や食道への逆流が多いことから、第一選択であるべきかどうかについて再検討されはじめています。近年、ルーワイ法を多く用いる施設が増えてきています。

2.腹腔鏡下胃切除

腹腔鏡手術は、腹部に小さい穴を数ヵ所開けて、専用のカメラや器具で手術を行う方法です。通常の、開腹手術に比べて、手術による体への負担が少なく、手術後の回復が早いため、手術件数は増加しています。開腹手術と比べて、リンパ節郭清が難しいこと、消化管をつなぎ直す技術の確立が十分とはいえないことなどから、胃がんに対する腹腔鏡手術件数は全体としてはまだ少ないのが現状です。また、通常の手術に比べて合併症の発生率がやや高くなる可能性も指摘されています。

3.内視鏡的治療

おとなしいタイプの癌細胞の場合で、病変が浅く、リンパ節に転移している可能性が極めて小さいときは、内視鏡を用いて胃がん切除する、内視鏡的粘膜切除術(EMR)などの方法があります。これらの治療では、内視鏡による切除が十分かどうかを病理検査で確認します。不十分な場合は胃を切除する手術治療が追加で必要になります。

内視鏡的粘膜切除術(EMR)について
内視鏡を用いて病巣粘膜の下に生理食塩水などを注入して病変の粘膜を浮かせ、スネアと呼ばれる輪状のワイヤーを用いて粘膜を焼き切る方法です。1980年代からこの方法が行われていましたが、内視鏡下で扱える細いナイフ(ITナイフ)が開発されてからは、粘膜の下をナイフではぎ取る方法(内視鏡的粘膜下層剥離術)が主流になりつつあります。

内視鏡的粘膜切除術は、リンパ節転移の可能性がほとんどない胃がんに対して行われます。リンパ節転移の可能性のない癌の条件としては、1. 癌が粘膜内に限局し、2. 組織型が分化型腺癌であり、3. 癌の内部に潰瘍を併発しておらず、4. 大きさが2cm以下であること、があげられています(日本胃癌学会ガイドライン)。これを満たす小さい胃がんは、内視鏡的粘膜切除術で確実に切除でき、根治できるでしょう。しかし最近では、ESDの普及により、2cm以上の大きな病変や内部に潰瘍を伴う病変も技術的に切除が可能となり、さらにリンパ節転移の可能性のない腫瘍の条件設定も詳しく分析が進んだため、上記の条件を少しはみ出す腫瘍に対しても、臨床研究として治療が試みられるようになってきています。

4.抗がん剤治療(化学療法)

胃がんの抗がん剤治療には手術と組み合わせて使われる補助化学療法と治療が難しい状況で行われる抗がん剤中心の治療があります。抗がん剤の副作用は人によって程度に差があるため、効果と副作用をよく見ながら行います。

(1)抗がん剤治療の種類と使われ方について

  1. 手術療法(外科療法)で切除しきれない場合 転移があって切除できない場合や、手術後に再発した場合、抗がん剤が試されます。さまざまな抗がん剤が開発されており、腫瘍縮小効果(奏効率)の高い薬剤も出てきています。しかし、いったん小さくなった腫瘍もまた再燃しますから、完全に治ることはほとんど期待できません。副作用は必ずといってよいほど出ますから、効果と副作用をよく見極めながら抗がん剤治療を続ける必要があります。
  2. 再発を予防する化学療法(補助化学療法) 手術で切除できたと思われる場合でも目に見えない癌が残っていてあとで育ってくるのが再発です。これを予防する目的で行われるのが補助化学療法です。手術のすぐあとですし、治ってしまっている可能性もありますから、あまり副作用の強い薬は使えません。普通、飲み薬の抗がん剤(経口抗がん剤)が用いられます。
  3. 手術の前に行う化学療法(術前化学療法) 手術で切除できると思われる胃がんでも、まず抗がん剤で小さくしておいてから手術するほうが、より確実に切除できるかもしれません。あるいは、そのままでは切除できないかもしれない癌も、抗がん剤で小さくなれば切除できるかもしれません。これをめざして行うのが術前化学療法です。

(2)抗がん剤治療の副作用

抗がん剤は癌細胞だけでなく、正常な細胞にも影響を及ぼします。特に髪の毛、口や消化管などの粘膜、骨髄など新陳代謝の盛んな細胞が影響を受けやすく、その結果として、脱毛、口内炎、下痢、吐き気が起こったり、白血球や血小板の数が少なくなることがあります。それ以外には、心臓への影響として動悸や不整脈が、また肝臓や腎臓に障害が出ることもあります。副作用が著しい場合には治療薬の変更や治療の中断などを検討することもあります。

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