腎臓がん(腎癌)

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腎臓がん(腎癌)

【1】腎臓がん(腎癌)とは
腎臓がん(腎癌)

腎臓は、尿を造る臓器です。
ちょうど肋骨の下端の高さで、左右、両方にソラマメのようなかたちをした、長さ10cm×5cm、幅3cm程度の臓器で、血液をこして尿を生成しています。また、血圧のコントロールに関するホルモンや造血に関するホルモンを産生しています。
腎臓に発生する腫瘍には、成人に発生する腎臓がんと、小児に発生するウィルムス腫瘍があります。さらにまれな腫瘍として肉腫があります。腎臓には良性の腫瘍が発生することもあります。
一番頻度が高いのは、腎血管筋脂肪腫です。通常、放置して構わないのですが、10cm以上の大きさになると出血する危険があり、治療の対象となります。ここでは、成人に発生する腎臓がんの解説をします。
年齢別にみた腎臓がんの罹患(りかん)率は、50歳から70歳まで増加します。腎臓がんによる死亡は、腎臓全体(腎細胞・腎盂(じんう))の癌による死亡の約8割を占めます。死亡率は男性のほうが女性よりも高く、女性の約3倍です。
腎臓がんの確立されたリスク要因は、腎不全、喫煙、肥満(特に女性の肥満)、高血圧とされています。その他、利尿剤服用(特に女性)、フェナセチン含有鎮痛剤が、リスク要因の候補に挙げられています。基礎疾患としては、常染色体優性遺伝であるvon Hippel-Lindau病との関連や、結節硬化症、多発性嚢胞(のうほう)腎がリスク要因とされています。

【2】腎臓がんの症状

早期(腫瘍の最大径が5cm以下)で、何らかの症状があることはまれです。最近は人間ドックの腹部超音波検査や、他の病気で精査中に偶然発見される場合が増えてきています。古典的な症状では、血尿、疼痛、腹部腫瘤ですが、骨転移による病的骨折や、肺転移による咳や血痰などの転移による症状で見つかる患者さんも少なくありません。
サイズの大きい腫瘍では、血尿、腹部腫瘤(しゅりゅう)、疼痛などがみられます。また、全身的症状として発熱、体重減少、貧血などをきたすことがあります。まれに、腎臓がんが産生する物質によって、赤血球増多症や高血圧、高カルシウム血症などが引きおこされることがあります。
この癌は、もともと静脈内に進展しやすいのですが、静脈内への腫瘍の進展によって、下大静脈という腹部で一番大きな静脈が閉塞すると、血液が他の静脈を通って心臓に戻るため、腹部体表の静脈が目立ったり、陰嚢内の静脈が目立つ(精巣静脈瘤)現象がおこったりすることがあります。腎臓がんで発熱や体重減少など全身的な症状を伴っている場合、進行がはやいといわれています。
検診などで症状のない腎臓がんが発見される機会が増えているのですが、腎臓がんの約2割は、肺や骨に転移した腫瘍がまず発見され、いろいろ調べているうちに腎臓に原発の癌が見つかり、腎臓がんの肺や骨転移と診断されることがあります。肺に転移が存在しても自覚症状はあまりありません。

【3】腎臓がんの診断

1.超音波検査

簡便で、スクリーニング検査としては非常に診断学的価値のある検査です。腫瘍の発見には有用ですが、質的な診断(癌かどうか)は難しい場合もあります。腎嚢胞(じんのうほう:腎臓に水のたまる袋ができるもの)や良性疾患である腎血管筋脂肪腫などの鑑別にも有用です。

2.CT検査

この検査によって、腎の腫瘍性病変の鑑別診断が可能です。また、静脈内の腫瘍塞栓の有無やリンパ節転移の有無などが診断できます。胸部X線写真や肺CTにより肺転移の有無を検索します。血管造影検査も重要な検査ですが、侵襲(しんしゅう:身体的負担)が大きいこと、質の高いCT検査を施行すれば血管造影検査とほぼ同様の情報が得られることなどにより、近年、施行される機会は少なくなっています。

3.血液検査

腎臓がんに特有の腫瘍マーカはありませんが、血沈やCRP、IAP、等の値で、ある程度予後を予測することができます。

【4】腎臓がんの病期(ステージ)

腎臓がんの病期は、「腎臓がん取扱い規約 第3版 日本泌尿器科学会・日本病理学会・日本医学放射線学会/編 1999年金原出版(株) 東京」によれば次のように分類されています。

  pT   原発腫瘍
  pTX   原発腫瘍の評価が不可能
  pT0   原発腫瘍を認めない
  pT1   最大径が7.0cm以下で、腎に限局する腫瘍
pT1a 最大径が4.0cm以下で、腎に限局する腫瘍
pT1b 最大径が4.0cmを越えるが7.0cm以下で、腎に限局する腫瘍
  pT2   最大径が7.0cmを越え、腎に限局する腫瘍
  pT3   腫瘍は主静脈内に進展、または副腎に浸潤、または腎周囲脂肪組織に浸潤するが、Gerota筋膜を越えない
pT3a 腫瘍は副腎または腎周囲脂肪組織または腎洞脂肪組織に浸潤するが、Gerota筋膜を越えない
pT3b 腫瘍は腎静脈または横隔膜下までの下大静脈内に進展する
pT3c 腫瘍は横隔膜を越える下大静脈内に進展する
  pT4   腫瘍はGerota筋膜を越えて浸潤する
  pN   所属リンパ節
  pNX   所属リンパ節の評価が不可能
  pN0   所属リンパ節転移なし
  pN1   1個の所属リンパ節転移
  pN2   2個以上の所属リンパ節転移
  pM   遠隔転移
  pMX   遠隔転移があるかどうか評価不能
  pM0   遠隔転移なし
  pM1   遠隔転移あり

【5】腎臓がんの治療

1.外科療法

腎臓がんの治療の主体は外科療法です。
病期にかかわらず、摘出できる場合は腎臓の摘出、あるいは腎臓を部分的に摘出することが最も一般的です。仮に肺や骨に転移があっても、腎臓の外科的摘出が考慮される場合があります。
(1)腎臓を摘出する手術がそれほど身体にダメージがないこと
(2)腎臓を摘出した後、転移巣に対して免疫療法、外科療法などを行うことにより、
治癒したり、癌の進行が抑えられたりすることがあること
(3)癌をそのままにしていた場合、将来、出血や腹痛、発熱、貧血などが発生し、
生活の質が低下すること
これらを配慮して摘出が行われています。
近年では、各種画像診断の普及から、腫瘍サイズが小さい腎臓がんが発見される機会が増加しています。このような小さい腎臓がんに対しては腎臓を全部摘出せず、腫瘍とともに腎臓の一部のみを摘出(腎部分切除)する手術が行われています。このような手術を受けた場合でも腎臓を全部摘出した場合でも再発率、生存率については大差がなく、施設ごとの基準にしたがって腎部分切除もさかんに行われるようになっています。
また、従来は腹部を切って腎臓を摘出していましたが、一部の施設では腹部を大きく切らず内視鏡を腹壁から挿入して手術する方法(腹腔鏡下手術、腹腔鏡補助手術)が行われています。
この手術は、腹部を大きく切らないため傷が目立たず、術後早く退院できるなどのメリットがあります。しかし、手術時間は術者の慣れにもよりますが、開腹手術より長くなります。
また、手術はテレビモニターを見ながら行われるため、術中知らない間に臓器を損傷させたり、急な出血に対応しにくかったりという問題があります。
さらに、癌診断のためには摘出した腎臓をある程度現形をとどめて体外にとり出さなくてはならず、そのためにある程度、腹部を切る必要があり、せっかく傷を小さくして手術してもどうしても5~7cm程度の傷が入ってしまうという矛盾があります。

2.動脈塞栓術

腎動脈を人工的に閉塞させ、癌に血液が流れ込まないようにする方法です。この方法は摘出が不可能な場合や、大きな腫瘍を摘出する場合、手術に先立ち、施行されることがあります。

3.放射線療法

骨、脳転移などに対しては、症状緩和目的で放射線療法が行われることがあります。

4.免疫療法

転移巣に対しては、自己の免疫力を高める免疫療法を行うことが一般的ですが、転移巣が少数で、腫瘍の大きさや数がかわらない場合、経過観察後あるいは免疫療法後に手術による転移部位の摘出が行われることがあります。肺の転移巣に対する外科療法では長期生存も期待されます。
腫瘍が多発したりしている場合は、免疫療法が主体となります。インターフェロンやインターロイキン2という薬を点滴したり、注射したりします。抗がん剤の治療効果はほとんど期待できません。
腎臓がんは免疫療法により効果が認められることなどにより、近年、各種の先端医療が試みられていますが、そちらについては、まだ実験的な段階にあります。
最近、分子標的治療が登場し、腎臓がんに対してインターフェロンを上回る効果が認められる治療薬も開発され、現在、日本での認可のための治験中です。

【6】腎臓がんの副作用

腎臓のみを摘出する手術に合併症はあまりありません。
腎臓は左右に2つあり、ひとつのみの腎臓を摘出しても、通常の生活や軽い運動(水泳やゴルフ)等全く支障ありませんし、人工透析が必要となるような腎機能不全に陥ることはまずありません。
動脈塞栓術は一時的な発熱、痛み、腸閉塞や全身衰弱などの副作用がありますが、徐々におさまります。
免疫療法では、個人差もありますが、インフルエンザに似た発熱、関節の痛みなどが認められますが、ほとんどの患者さんで“馴れ”が生じ、だんだん熱が出なくなり解熱剤なども不要となることが多いです。ただ、疲労感は多少残ります。

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