前立腺がん

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前立腺がん

【1】前立腺がんとは
前立腺がん

前立腺は男性にだけあり、精液の一部をつくる臓器です。前立腺は、恥骨(ちこつ)の裏側に位置し、尿道を取り巻いており、栗の実のような形をしています。
この前立腺に癌が発生する病気が前立腺がんです。

1.前立腺がんの発生

前立腺がんは、前立腺の細胞が正常の細胞増殖機能を失い、無秩序に自己増殖することにより発生します。最近、遺伝子の異常が原因といわれていますが、正常細胞がなぜ癌化するのかまだ十分に解明されていないのが現状です。前立腺がんが発生してから症状を呈する癌に育つまでには30~40年かかるといわれています。
前立腺がんが、よく転移する臓器としてリンパ節と骨があげられます。

2.前立腺がんの原因

前立腺がんの確立したリスク要因は、年齢、人種、前立腺がん家族歴とされています。動物実験などから、アンドロゲンが前立腺がん発生に重要な役割を果たしているのではないかと考えられてきましたが、現在のところ、疫学研究ではこの仮説に一致する結果は得られていません。最近では、IGF-1によってリスクが高くなる可能性が指摘されています。
食事・栄養素に関しても、現状では確立された要因はありませんが、リスク要因として脂質、乳製品、カルシウム、予防要因として野菜・果物、カロテノイド、ビタミンE、セレン、ビタミンD、イソフラボンなどが候補に挙げられています。

【2】症状

他の癌と同じように早期の前立腺がんに特有の症状はありません。あるとしてもその多くは前立腺肥大症に伴う症状です。具体的には排尿困難、頻尿、残尿感、夜間多尿、尿意切迫、下腹部不快感などです。このような症状があり、たまたま病院を受診した際に前立腺がんの検診が併せて施行され、検査の結果、前立腺がんが発見されることがほとんどです。また前立腺がんが進行しても転移がない場合の症状は前立腺肥大症と大差はありません。
前立腺がんは進行すると骨に転移しやすい癌です。前立腺自体の症状はなく、たまたま腰痛などで骨の検査を受け、前立腺がんが発見されることもあります。

【3】診断

1.PSA検査

前立腺がんの診断に関して、最も重要なのは前立腺特異抗原(PSA)とよばれる腫瘍マーカーの採血です。PSAはとても敏感な腫瘍マーカーであり、基本的に前立腺の異常のみを検知します。PSA値の測定は前立腺がんの早期発見に必須の項目です。ただPSA値が異常であれば、そのすべてが癌になるというわけではありませんし、逆にPSA値が正常の場合でも前立腺がんが発生していないということにもなりません。あくまで、前立腺がんを発見するきっかけとなるひとつの指標です。

2.直腸診と超音波検査

肛門から指を挿入して前立腺の状態を確認する直腸診、あるいは肛門から専用の超音波器具を挿入する経直腸的前立腺超音波を行い前立腺がんの疑いがあるか検討します。

3.生検

PSA値あるいは直腸診、超音波検査により前立腺がんの疑いがある場合、年齢も考慮しながら最終的な診断を行うために前立腺生検が実施されます。
検査方法としては、直腸などから前立腺に針を刺し込み、前立腺の組織を採取します。
近年では、より正確に癌細胞を採取するため、直腸に超音波を発生する針を入れ、超音波画像で確認しながら、組織を採取する方法がとられています。

4.グリーソンスコアー

顕微鏡検査で前立腺がんと診断された場合、前立腺がんは腫瘍の悪性度をグリーソンスコアーとよばれる病理学上の分類を使用して表現します。これは癌の悪性度を5段階に評価するものです。「1」が最もおとなしい癌で、「5」が最も悪い癌を意味します。前立腺がんの多くは、複数の、悪性度の異なる成分を有しているため、最も多い成分と次に多い成分を足し算してスコアー化します。

5.画像診断

前立腺がんと診断された場合、病気の拡がりを確認するため、CT、あるいはMRI、骨シンチグラムが施行されます。これらにより局所での進行の程度、リンパ節転移、あるいは骨転移の有無を確認します。
CTはリンパ節転移や癌の周辺への進展の有無を確認するために施行されます。MRIでは前立腺内で癌が存在している場所や前立腺内に癌がとどまっているか、あるいは前立腺外への進展がないか、精嚢への浸潤がないか、など特に治療として手術療法が考慮される場合には有用な情報が得られます。
骨シンチでは骨に異常がある場合には集積が強く描出されます。集積の度合いやそのかたよりなどにより骨転移があるかどうかを判定します。

【4】病期(ステ-ジ)

前立腺がんと確定診断された後は、癌がどこまで拡がっているかをみるため腹部、骨盤部のCTやMRIを施行します。また、前立腺がんの転移部位として最も多いのは骨であり、骨転移を調べるために骨シンチグラムと骨の単純X線撮影を施行します。これにより臨床病期を決定します。前立腺がんの臨床病期はTNM分類により、原発巣の拡がりや深達度をT、所属リンパ節転移をN、遠隔転移をMで表しています。大きく分けると以下の通りですが、更に細分化されますので、医師に確認が必要です。

T 原発腫瘍

 T 1  触知不能、または画像では診断不可能な臨床的に明らかでない腫瘍  
 T 2  前立腺に限局する腫瘍  
 T 3  前立腺被膜を越えて進展する腫瘍
 T 4  精嚢以外の隣接組織に固定、または浸潤する腫瘍

N 所属リンパ節

 N 0  所属リンパ節転移なし  
 N 1  所属リンパ節転移あり  

M 遠隔転移

 M 0  遠隔転移なし  
 M 1  遠隔転移あり  

【5】治療と副作用

前立腺がんの治療法には、「手術療法」、「放射線治療」、「内分泌療法」、さらには特別な治療を実施せず、当面経過観察する「待機療法」があります。前立腺がんの治療を考えるうえで大切なポイントは発見時のPSA値、腫瘍の悪性度(グリーソンスコアー)、病期診断、比較的進行がゆっくりしている癌であることから、ご本人の年齢と期待余命、最終的にはご自身の病気に対する考え方などによります。前立腺がんの正確な病期診断には限界があるため、グリーソンスコアーや治療前のPSA値なども参考にしながら治療法が考えられています。

1.手術療法

前立腺がんの根治が期待できる最も有効な手段は、癌組織および癌が疑われる部位をすべて摘出することです。つまり、前立腺をすべて摘出することになりますが、この前立腺全摘手術はすべての患者が受けられるわけではありません。前立腺の摘出手術は、「癌が前立腺内にとどまっている状態」の患者に限られます。

(1) 前立腺全摘手術
前立腺がんの発見が早期であり、癌が前立腺にとどまっている場合には開腹による前立腺全摘手術が行われます。開腹といっても腹膜にメスを入れるわけではなく、恥骨上部からメスを入れる恥骨後式と、精巣と肛門の間からメスを入れる会陰式の二通りがあります。
この手術の後遺症として勃起障害が起こる可能性があります。これは前立腺の周辺に勃起に関わる神経があるため、手術の際に神経が傷ついて起こるものです。また、手術の際に尿道括約筋(にょうどうかつやくきん)が傷つくと尿失禁が起こるようになります。しかし最近では手術法が進歩しているため、こうした後遺症のリスクは減ってきています。

(2) 腹腔鏡下前立腺全摘手術
腹腔鏡下手術とは腹腔鏡と呼ばれる内視鏡で行う手術の事で、お腹を大きく切らず腹部に小さな穴を開けて手術を行うため、患者の負担が少なくてすむ手術です。
手術の際には腹腔鏡を入れるためにお腹を2~4cm切るほか、手術器具を入れる小さな穴も3~4ヶ所あけます。従来の開腹手術に比べて出血が少なく、手術後の回復も早いためにメリットの多い手術ですが、早期の前立腺がんでしか行えません。

(3) 経尿道的前立腺切除術
前立腺がんの手術といえば、根治を目指した前立腺の全摘手術が代表的ですが、癌がかなり進行して手術が行えない場合には患者のQOLを向上させるために前立腺の一部を切除する経尿道的前立腺切除術が行われます。
癌が進行して前立腺が大きくなると、尿道を圧迫して排尿障害が起こるようになります。ひどくなると尿道が塞がれて、排尿が行えなくなります。そのため、尿道から内視鏡を挿入して尿道を圧迫している前立腺を取り除き、尿がスムーズに出るようにします。

2.放射線治療

放射線を使って癌細胞の遺伝子を破壊し細胞分裂をできなくする方法です。前立腺がんに対する放射線治療はさまざまな方法が登場してきています。前立腺がんに対する放射線治療には手術療法と同様に転移のない前立腺がんに対する根治を目的とした場合と、骨転移などによる痛みの緩和、あるいは骨折予防のために使用される場合があります。

((1)外照射法
転移のない前立腺がんに対して、身体の外から患部である前立腺に放射線を照射します。前立腺がんに対する放射線治療では放射線の総量が多くなればなるほどその効果が高いことが知られています。
この治療中の副作用としては、前立腺のすぐ後ろに直腸があるため、頻便や排便痛、出血、また膀胱への刺激により頻尿や排尿痛などが挙げられ、照射方法によっては放射線皮膚炎や下痢が生ずることがあります。

(2)密封小線源療法(組織内照射法)
小さな粒状の容器に放射線を放出する物質(アイソトープ)を密封し、これを前立腺へ埋め込む治療法です。多くは半身麻酔のもとに肛門から挿入した超音波で確認しながら、計画された場所に専用の機械を使用して会陰からアイソトープを埋め込みます。外照射法と比較して数日で治療が終了し、前立腺に高濃度の放射線を照射することが可能であり、副作用も軽度です。埋め込まれた放射性物質は半年くらいで効力を失い、取り出す必要はありません。

3.内分泌療法(ホルモン療法)

前立腺がんは男性ホルモンの影響で病気が進むという特徴があります。男性ホルモンは主には精巣、一部は副腎からも分泌されます。男性ホルモンを遮断すると癌の勢いがなくなります。内分泌療法とは、このことを利用した治療法です。
方法としては精巣を手術的に除去するか、LH-RHアナログと呼ばれている注射が使用されます。注射剤は1ヵ月あるいは3ヵ月に1度注射することで精巣の働きをなくします。また男性ホルモンが癌に作用しなくする抗男性ホルモン剤という飲み薬を服用することもあります。抗男性ホルモン剤は副腎からの男性ホルモンの働きも遮断します。現在、内分泌療法の初期段階では注射あるいは飲み薬が単独あるいは、併用して使用されることが一般的です。
内分泌療法の副作用としては急に発汗したり、のぼせやすくなるホットフラッシュと呼ばれる症状が起こることが一般的です。抗男性ホルモン剤を使用した場合には乳房痛も認められることがあります。また下腹部に脂肪がつきやすく体重が増加しやすくなります。女性ホルモン剤では心臓や脳血管に悪影響を及ぼし、重篤な場合には心不全や脳梗塞などが起こることがあります。内分泌療法を施行した場合、多くの場合に性機能障害が現れます。

4.待機療法

前立腺生検の結果、比較的おとなしい癌がごく少量のみ認められ、とくに治療を行わなくても余命に影響がないと判断される場合に行われる方法です。PSA値を定期的に測定し、その上昇率を確認します。PSA値が倍になる時間が2年以上と評価される場合にはそのまま経過観察で良いのではと考えられています。

【6】再発

再発を確認する検査としては現在、PSA値の推移を確認していくことが一般的です。手術のあとも内分泌療法を継続しているなど、併用療法のない場合には、PSA値の上昇は再発の最初の兆候として現れます。
PSA値に関しては時に誤差がでることがあり、手術療法のみを受けたあとでは一般的にPSA値が0.2ng/mlを超えると再発の疑いがあると考えられています。
また放射線治療のみを受けたあとでは1.0ng/mlを超えると再発の疑いがあるとされています。手術あるいは放射線治療の後、併用療法を施行されている場合にはこの定義はあてはまりません。
内分泌療法を施行していてPSA値が上昇した場合あるいは臨床的再発をした場合には再燃と呼ばれ、この場合には内分泌療法の種類を変更したりします。

【7】生存率

前立腺がんの予後は、全身状態、年齢、病期および癌細胞の性質、さらには選択された治療法などにより決まります。全体として前立腺がんは進行が遅く、10年生存率はそれぞれ、前立腺内に限局している場合で手術療法を施行された場合、90%以上、放射線治療が施行された場合80%以上が期待されます。内分泌療法単独の場合にはそれ以下となります。
遠隔転移のある前立腺がんは転移のない前立腺がんと比較すると予後不良で5年生存率は20~30%となっています。

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