腟がん

腟がん

【1】腟がんとは
腟がん

腟がんは女性の癌のうちでも大変まれな疾患で、半数は子宮全摘出後に発生します。その頻度は女性性器癌の約1%を占めるにすぎません。
腟は子宮頸部と外陰をつなぐ筒状の組織です。腟の表面は粘膜でおおわれており、この粘膜から癌が発生し、進行すると表面を拡がったり、粘膜の下の筋肉に拡がったり、さらには周囲の臓器にまで浸潤(しんじゅん:広がること)することもあります。
腟がんには、扁平上皮がんと腺がんという2種類の組織型があります。大部分(80~90%)の腟がんは扁平上皮がんであり、一般に閉経後の50~60歳の女性にみられます。
腟がんは、子宮頸がんに連続する病変である場合が多く、ヒューマン・パピローマ・ウイルス(human papilloma virus:HPV)感染関連疾患として、子宮頸がんと共通のリスク要因によると考えられます。その他、妊婦がディ・エチル・スチル・ベストロール(DES)を使用すると、生まれた子どもの腟がん(明細胞腺がん)のリスクが高くなることが知られています。
他の癌と同様に、腟がんも早期発見、早期治療が第一です。自覚症状がある場合は、すぐに医師の診察を受けることが大切です。

【2】症状

最も多い症状は生理以外の出血や帯下(たいか:おりもののこと)ですが、排尿時の違和感や痛み、性交時の痛み、下腹部痛なども腟がんの可能性があります。

【3】診断

最初に腟内に何か異常な部分がないか診て調べます。その時に細胞診の検査を行います。綿棒やブラシで子宮頸部や腟の表面をこすって細胞を採取します。次に内診して異常に触れる部分、つまり「しこり」の有無を調べます。後に細胞診で異常な細胞が見つかった場合は、組織診といって組織の一部を採取し、顕微鏡で癌細胞があるか、どのような種類の癌細胞であるかを詳しく調べます。また、「しこり」を見つけた場合には組織をとります。癌のできた場所と拡がりぐあいを調べるために、腟の中だけでなく骨盤内の他の臓器についても、診察やCT・MRIなどの検査を行います。さらに肺に転移していないかどうかを調べる胸部レントゲン検査などの検査も行います。

【4】病期(ステージ)

腟がんと診断されると、治療方針の決定のために癌の拡がり程度(病期)を知る必要があります。腟がんの病期は、次のように分かれています。

 0期  (上皮内がん)極めて早期の癌で、腟のごく表層にだけ限局している。
 I期  腟の壁に限局している。
 II期  癌が深く潜り腟の周囲の組織に拡がっているが、骨盤の壁をつくっている骨や血管周囲にまでは拡がっていない。
 III期  癌が骨盤の壁にまで拡がっている。また、周囲の組織やリンパ節にまで拡がっていることが多い。
 IVa期  膀胱や直腸までの臓器に拡がっている。
 IVb期  肺などの全身の遠い部位に拡がっている。

【5】治療

腟がんの治療には、外科療法、放射線療法、化学療法の3つの方法があります。ごく早期の腟がんに対しては、レーザー治療(その部位を焼いて蒸散させる方法)を行うこともあります。

1.外科療法

手術によって癌を十分に切除できれば、非常に確実な治療法です。
腟は、前方には膀胱、後方には直腸肛門が近接し、側方は足に栄養を送る血管や大事な神経が存在するため、手術が広範囲に及ぶ場合、どの機能をどの程度温存するかが問題となります。
一般的に、がん病巣が腟の表層に限局している場合や、腟の上部1/3にある場合に限って外科療法を行います。

2.放射線療法

この方法は、腟がんの治療の中で主な治療法です。放射線療法は、高エネルギーX線によって癌細胞を消滅させ、腫瘍を縮小させます。照射方法には2種類あり、放射線発生装置を用いて体外から放射線を照射する外照射と、放射線が発生する物質を癌のある部位にプラスチックの筒を通して挿入する腟内照射があります。放射線療法は単独で行ったり、手術の後の追加治療として行ったりします。

3.化学療法

化学療法は、経口剤や静脈注射によって抗癌剤を体内に投与する治療法です。
抗癌剤は血流に乗って全身をめぐり、腟壁などにある癌細胞を消滅させるので全身療法と呼ばれています。また、癌に対する薬剤濃度を上げ、副作用を軽減するために、癌病巣に流れている動脈内に抗癌剤を注入する動注療法も試みることもあります。
一般的にシスプラチン、カルボプラチン、タキソール、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ペプレオマイシン、フルオロウラシル(5-FU)などの抗癌剤を組み合わせて使用します。
しかし、化学療法だけで完治することは難しいので、外科療法や放射線療法と併用して治療を行います。

【6】病期(ステージ)別治療

腟がんの治療方法は、病期、組織型、年齢、全身状態などによって選択します。

0期

ごく表層の病変であるため、手術により腟の一部を切除するか、レーザー治療により高い治癒率が期待できます。腟内照射を行うこともあります。

I期

腟がんの組織型が、扁平上皮がんであるか、腺がんであるかで治療方法がかわります。

・扁平上皮がんの場合
1.腟内照射(外照射を併用することもあります)を行います。
2.腟の上部1/3の病変には、広汎性子宮全摘(こうはんせいしきゅうぜんてき)、腟摘出術、及び骨盤リンパ節郭清を行います。
3.腟入口部に近い場合は、外陰がんに対して行う広汎性外陰切除を拡大して行うこともあります。
2や3の場合、摘出した標本の所見から追加治療が必要になった場合は、手術後に放射線療法を加えることがあります。

・腺がんの場合
1.腟の上部1/3の病変には、広汎性子宮全摘、腟摘出術、及び骨盤リンパ節郭清を行います。
2.腟入口部に近い場合は、広汎性外陰切除を拡大して行うこともあります。
3.手術によって切除が困難な部位に癌がある場合は、腟内照射(外照射を併用することもあります)を行います。

II期

外科療法では完全に切除することができないため、放射線療法を行います。
腟内照射と外照射の両方を行います。
化学療法で腫瘍を小さくした後、外科療法や放射線療法を行うことがあります。

III期

外科療法では完全に切除することができないため、放射線療法を行います。
腟内照射と外照射の両方を行います。
化学療法で腫瘍を小さくした後、外科療法や放射線療法を行うことがあります。

IVa期

治療方法は次のようになります。
腟内照射と外照射の両方を行います。
膀胱や直腸には浸潤しているが、骨盤の壁にまでは浸潤していない場合、腟を子宮・膀胱・直腸肛門と一緒に切除(骨盤内臓全摘)し、人工膀胱・人工肛門をつくる手術を行うことがあります。

IVb期

遠隔転移があるため、現在の治療方法での完全治癒は困難です。主に痛み、悪心、嘔吐、消化器症状などの症状軽減のための治療を行います。

【7】治療の副作用

1.外科療法

局部切除やレーザー治療では副作用はありません。
広汎性子宮全摘だけでなく腟全摘除を行った場合は、腟はほとんどなくなるため性交はできなくなります。
リンパ節を除去する手術の副作用としては、下肢のむくみ、広汎性子宮全摘をした場合は排尿障害などが生じます。
広汎性外陰切除を行った場合は、下肢のむくみや外陰の変形などが生じることがあります。

2.放射線療法

放射線療法の副作用は、腟内照射だけの場合は軽度ですが、外照射や外照射と腟内照射を併用した場合には強く出現します。
放射線療法直後の副作用としては、皮膚障害、下痢、吐き気、腹痛、白血球減少などがあります。また腟も狭くなるので、高度の場合は性交障害の可能性もあります。晩期(6ヶ月~2年以降)の副作用としては、直腸からの出血、血尿、腸閉塞などがあります。

3.化学療法

化学療法の副作用は、骨髄障害、悪心、嘔吐、脱毛、肝・腎障害、それに神経障害があります。対策は休薬、減量、中止すればよいのですが、G-CSFで白血球減少を防止したり、葉酸で口内炎を防止するということもあります。神経障害はあくまでも予防が原則です。多数の薬剤/放射線と併用の場合は、特に注意して使用しますが、いずれも癌化学療法の専門医が担当しますから、副作用対策は十分なされています。

【8】再発

再発した部位がごく表面の狭い範囲である場合は、外科療法や放射線療法で治療することが可能です。しかし、再発が周辺臓器にまで拡がった場合の治療は非常に困難となり、再発の部位、再発の拡がり方、前回の治療方法などを総合的に考慮して、外科療法、放射線療法、化学療法を組み合わせた集学的治療を行うことになります。

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